接続接待





ひとつ、ふたーつ、みぃーっつ。
接続する数が重なる毎に、繋がる時間も徐々に増えていく。
時を刻むように、時計に添えた手をぎこちなくずらして重ね合い、指を一本ずつ絡めて。
息も継げぬほど長くなった頃、ようやく二人は瞼を上げ、直後、顔を真反対に逸らせた。

「ーーーっ!!!」
「~~~っ!!!」

わなわなと震える口元を押さえたら、さっきまで触れていた熱を思い出し、さらに震え。
朱に染まる顔を両手で覆えば、同じように頬に触れていた手指の動きを…ボン!再発火。
あまりにも馴染みのないお互いの姿に、心底動揺し、わたわたを隠し切れないでいた。

「ちょっと、タンマっ!!お、落ち着けっ」
「ぶぶぶっ、ブレイクっ!しっ、深呼吸っ」

「脳も、心臓も、感情もなんもかんも…」
「状況に、全くついていけてません…っ」

(ちょっと知ってたつもり…でしたけど!)
(全~っ然、何も知ってなかった…よっ!)


高校時代に袖擦り合っていた頃に比べたら、今は毎週末に宅飲み&寝落ちコースで、
お互いに『お仕事中!』以外の一面も、知りつつあるよな~と、思っていたけれど。
ソレとコレとは…そういうイミで一線を越えるか越えないかでは、全く違う!

正直言えば、こうなったらイイな~という、淡い期待やら予感めいた雰囲気みたいな、
そういう欲が微塵もなかったかといえば、大嘘になるけれど。
いざこうして『接続』が叶ってしまったら、何も知らなかった衝撃で、心臓バクバク。

「つっ、付き合いが、無駄に長いから…っ」
「変化した時の反動が、尋常じゃねぇ…っ」

「そのツラしといて、この場で照れまくりとか、冗談も大概にして下さいっ!」
「お前こそ、普段の無表情はどこ行った!?もうホント、勘弁してくれよっ!」

相手の見知らぬ表情に、驚愕と羞恥と、それをはるかに凌駕する歓喜が混ざり合い、
頬が緩んで笑顔仮面を突き破り、どこからともなく笑みが溢れてくるのを止められない。
今はその顔をこれ以上見ていられないし、この顔も見られたくない…ということにして、
黒尾は赤葦を胸の中にしっかり抱き込むと、赤葦も同じ力で黒尾の背に腕を回した。

「あ~もう!高校生でも、あるまいに」
「思春期に逆戻り、した気分ですよね」

いやホント、れ…んっ
恋愛って、凄い疲れる


今日の仕事納めまで、お互いにバタバタ。師も走って逃げるほどの多忙ぶりだった。
蓄積疲労と、忘年会の酔いと、不慣れな心肺機能等酷使で、三十路はヘロヘロだ。
二人はほぼ同時に、相手の労をねぎらうように、ゆっくりと背中をさすり始め、
優しさ溢れる手のぬくもりに、ふわり。全身の力を抜いて…ふわぁ~。同時に大あくび。
毎週末、寝落ち前に響かせ合う、耳慣れた和音につられて、いつものシメを…

「今日も…今年も一年、お疲れ様でした」
「さんきゅ~、じゃ、そろそろ寝るか~」

(ん?そろそろ…寝る?)
(えっ、この部屋で…?)

宇内先生宅のリビングから、ゲストルームまでずるずる這って、そのまま…じゃないぞ!
いつもなら、並んだ二組の布団の上に倒れ込み、黒尾肉布団(赤葦抱き枕)で…だけども!

(そういう、ワケには…っ)
(イくわけ、ねぇよな…っ)

チラリと流した視線の先に、ドドン!!と鎮座する、広々ふっかふか高級寝具。
ぴゅあぴゅあ高校生ならともかく、この後の身の処し方ぐらいは、オトナとして、その…
仕事じゃないアレとかソレが、イロイロとおさまりきらないといいますか。

「黒尾さん。今は猫を被っておくべきです…助平ヅラ、隠して下さい」
「赤葦。無表情の方がムッツリに見えると…覚えといた方がいいぞ?」

お互い、こんなに『読み易い』はずじゃ、なかったのに。
何もかも勝手が違い過ぎて、ニヨニヨ緩むほっぺも、どうすることもできない。

(この、わたわたっぷりが!)
(すっげぇ、楽しい~~~!)


「お召しのスーツ、借り物ですよね~?」
「一張羅だろ?汚したらマズいよな~?」

「今夜も冷えますから、足腰を温めて…」
「酔いも醒まして、サッパリした方が…」

「お先に、どうぞ」
「いや、後でいい」

「どんな顔して、待ってろと?」
「よし、フェアにじゃんけん!」

勝った方が、後から入浴権をゲット
負けた方は、潔く先に風呂に入って
死ぬほど緊張しながら、ベッド待機
それなら、あいこだった場合は…?

ゴクリと盛大に生唾を飲み込み、黒尾の出方を待つ赤葦。既に両手を背に隠している。
黒尾はしばらく目を閉じて黙考。右手の拳を突き出し、フェアなルールを提案した。

「あいこなら、同時…しか、ねぇよな?」

のんびり一緒に風呂につかりながら、年末年始の連休中、二人で何して遊ぶかを考える!
部活でも仕事でもない『お休み中!』の姿を、じっくり知り合う絶好の機会だから、
できるだけ長い時間を一緒に過ごして、思う存分、冬休みを満喫しようぜ!

「あ!除夜の鐘を、聞きに行きたいです!」
「お!そのまま神社に、初詣も行こうぜ!」

「この時期、公園もガラ空きなんですよ!」
「それなら、ピクニックとボール遊びだ!」

「年越そばと、お屠蘇、お雑煮、お神酒…」
「正月明けのカレー…決めること多いな!」

まるで、冬休みに遊び倒す約束をする、高校生みたいな…ん?違う!!
高校時代の冬休みは、春高直前。普通の高校生らしい遊びなんて、してないじゃないか!

「高校生冬休みリベンジ、チャンス到来!」
「そうと決まれば、さっそく打合せです!」

我先にとスーツを脱ぎ捨て、二人で競うように、バタバタと風呂へ駆け込んで。
しまった!お湯を張ってなかった!と、失敗を笑いながら、互いの体で温め合って。
高校時代の合宿と、ここ数年の宅飲み寝落ちと、ほんのついさっきからの雰囲気とが、
全部混ざったような、不思議な浮遊感?現実離れした感覚?に、蕩けてしまいそうだ。


あたたかい蒸気とお湯に、浴室全体が満たされるまでの間。
ソファの続きと、次に繋げる隙間を埋めるように。キスの合間に、スキで満たしていく。

(何で、今まで、繋がってなかったのか…)
(接続してなかった方が、むしろ…大謎だ)



「そろそろ、さっきの返事…言えそうか?」
「寝言でよろしければ…言い続けますよ?」

「つまり、ダラダラデレデレ、寝まくる!」
「寝正月になることだけは、確定ですね!」




- 完 -




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※カフェバーでのライブ →『接続心贈』

2025/12/30