東京駅のホームで、宮ツインズを捕獲。
宇内先生宅で飲みむことにしたはいいが、いかんせん、5人全員が平均以上の大柄野郎。
タクシー1台に乗れるわけもなく、2台に分乗。俺はサムの方と一緒に二人で乗った。
本来は、俺・兄弟・青根と、ツムサム組がいいだろうが、逃走防止のため仕方ない。
とは言え、お互いほぼほぼ初対面。後部座席に並んで座っても、ただただ沈黙。
(何、喋ればいいんだよ…っ)
どこぞの大手企業営業とは違い、俺には社交性なんてスペックは備わっていない。
しかも、隣に居るのは、俺と良い勝負の不愛想な同僚と同レベルの、イケメン実業家様。
同い年のバレー経験者という繋がり以外、共通項をまるで思いつかねぇ。
(岩泉さん…俺には、荷が重すぎます!)
隣は隣で、初対面でいきなりイケメン台無し号泣顔を晒しまくった挙句、
俺の一張羅ジャージに涙と鼻水を染み込ませた負い目からか、ソッポを向き続けている。
当然、泣き腫らし傷心した奴を、優しく慰めてやる度量も、俺のどこにもない。
(いや…慣れては、いるかもしんねぇな。)
相互一方通行が続く、ドン詰まり幼馴染共に挟まれ、もう何年経つよ?
こういう時は、そう…心を無にして、クソどーでもいい話をして、時間を浪費するのみ!
それに最も相応しいネタは、お天気でも時事でもスポーツでもなく、コレ一択!
「京谷賢太郎。月島の同僚。」
「…宮、治。おにぎり屋や。」
「好きな食べ物は…からあげ。」
「っ!!」
困った時こそ、飯の話。
しかも、どうやら隣のおにぎり屋には、クリーンヒットしたらしい。
窓の外を向いていた顔が、ギュン!とコッチに一転、キラッキラの目を見せた。
(クッソ、眩しっ!イケメン…っ)
どこぞのパイセンのせいで、キラキラ系イケメンに若干の…いや、違う!
及川も月島も、キラキラは見た目だけ!中身は泥臭ぇ努力家!怯むこたぁねぇぞ賢太郎!
イケメンはイケメンってだけで、きっと一般人より大損してるに違いねぇんだ!
(よーっし、かかって来いや!)
イケメンおにぎりに気付かれないよう、こっそり奥歯を噛み締めて待機。
すると、ちょっと予想していなかった質問が、わくわくの瞳と共に返ってきた。
「からあげ…どうやって食うのが、一番美味いと思う?」
「そんなの、赤酢に決まってんだろ。」
「赤酢?なんやそれ???」
「あー、関西には、ねぇかもな。」
赤酢ってのは、江戸前寿司の赤シャリに使われる、赤っつーより黒っぽいお酢なんだ。
酒粕から作られてて、普通のよりもまろやかで、ふわっと香るカンジ、だな。
酸っぱいもん苦手でも、赤酢なら全然イケるし、とにかく旨味がすっげぇんだよ!
遠征先…横浜のラーメン屋に置いてあったんだけどよ、試しにかけてみて…衝撃だった。
その場でソッコー、通販で箱注文。以来、最愛の調味料になってんだ。
からあげは勿論、餃子もイイ!料理の隠し味にも、途中からの味変もたまんねぇよ!
「カップヌードルに赤酢。人生変わるぞ。」
「マジか…っ!俺んとこのおにぎりにも、使えそうか!?」
「そんなもん、お店に並べられたら…俺が全部、買い占めるかもしんねぇ。」
「赤酢の話、もっと聞かせてくれっ!!」
よし、わかった。
今日俺達が出会った『赤酢記念』に…
俺がお前んちに、贈っといてやるよ!
「俺のことは、赤酢伝道師と呼んでくれ。」
「っ!!?カ…カッケーーーっ!!」
ガツンと拳をぶつけ合い、その場で連絡先を交換し、ソッコーで通販注文&贈答完了。
おにぎりの具で隠し赤酢が合いそうなモノ談義で、大フィーバー。
あっという間に目的地到着、二人で肩を組んで飲み会場(先生宅)へ乗り込んだ。
「赤酢試したら、すぐに…電話くれよ?」
「勿論!今日から俺らは…赤酢兄弟や!」
- ⑤へGO! -
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2024/12/08分 BLEND小咄移設