接続不覚⑥・後編


「なーなー、もう腹減った!飯行こうぜ!」
「痛ぇ!わかったから、引っ張るなって!」
「木兎さん、上着と鞄!あ、靴も逆です!」


対談が終わるやいなや(終わった…の?)、木兎さんは大親友の腕を引いて飛び出し、
元参謀は、3人分の上着と鞄を抱え、わたわたと追いかけて行った。

「相変わらず、ウルサイ。」
「あはは…」

リビングに残された(自主的に残った)孤爪さんは、3人に視線すら向けず、
京谷さんから贈られてきたおかきを、ソファに半ば寝そべりながらパクついた。


赤葦さんの有給休暇から、約1月。
旅先から戻った赤葦さんは、休暇前と何も変わらない様子で、淡々と仕事をこなし、
俺は休暇前より更に汲々とシバかれつつ、毎週金曜晩には、お決まりの打合せ&宅飲み。
表面上は普段通り、漫画家&担当編集者&普及事業部の『御三方』関係が続いている。

ただ、表面をちょっとだけ剥がし、じっくり透かして見てみると、
黒と赤の視線が接続し、ほのかに交ざり、ふわっと緩んで、温もりを紡いでいたりして。

(むふふふふふ~~~♪)

そんな『こそばゆい接続具合』を、職場扉の隙間からヒッソリ覗き見…観察して、
コッソリ繋がった角名さんと、情報共有。盛大にニマニマしている。

そして今日、前回ゲストの宮兄弟から指名を受けた、木兎さん&孤爪さんをお迎えし、
何とか無事に、楽しく『コネクション!?』対談を終えたところだ。


「ホント、無事に対談できて…よかった。」

繋がりそうで繋がらず、繋がりかけたものを絶とうとしていた、ひと月前の二人。
あのままの状態では、とても木兎さん達と顔を合わせることなんて、できなかった。
二人にとって『要』だった、幼馴染&元上司と、何の準備もなく対談してしまえば、
おそらく二人の接続は、修復不能なまでに途切れてしまったはずだ。

(自らの手で、繋がりを切るカタチで。)

「昔から、手のかかる奴らだよ。」

宇内センセ、はい、チーズ。
テーブル越しに身を乗り出した孤爪さんは、スマホを高く掲げながら、俺と肩組み。
反射的にピースをキメて、パシャリ。プロジェクト完了~と、孤爪さんは写真を送信。

「まさかこんな風に、繋がってるとは…」
「思いもよらない、だろうね。」

二人でニンマリ、ハイタッチ。
そのタイミングで、『ナイス!』のメッセージが、スマホを震わせる。
送信者は、川西太一。『コネクション!!』プロジェクト、影の立役者だ。


内幕を、バラしちゃうと。といっても、ごくカンタンな話。
赤葦さんと黒尾さんを繋ぐ『接続点』になりたいと、発奮したのはいいけど、
どう考えたって俺一人の手に負える話じゃない。下手したらバレー界全体に亀裂が入る。
何としても、『要』達と対談する前に、物語を動かさないと、真エンディングは不可能。

そこで俺は、その時点では赤葦さんと繋がりのなかった、新たな接続点に救援要請した。
万が一、利害関係者(出版社)と諸問題発生した際に、仲介者として動いてくれる人と、
予め繋がっておくのが得策…と、黒尾さんの紹介で顧問契約を結んでいた、川西先生だ。

俺の話を聞いてすぐ、川西はその場で『ラスボス級の強力な助っ人』を招聘。
それが、同じように黒尾さん繋がりでの顧問先・孤爪研磨さんだった。
『コネクション!?』対談プロジェクトを、真の成功に導くために、
漫画家&投資家&法律家という、家系御三方が、『コネクション!!』していたのだ。

「北信介の乱入は、正直焦ったよね~!」
「そのお蔭で、赤北黒…堅物御三方も爆誕。オッサンがた、仲良くやってるみたい。」

「あの三人で、会話…できてるのかな?」
「俺らの想像力の『向こう側』だよね。」

要するに、幕の裏の裏に、もう一幕。
今回の『絵』を描いた最後の黒幕たる、孤爪さん率いる別の御三方が、糸を引いていた。
孤爪研磨が既に接続していると知れば、黒尾の守備力が150%増強し超厳戒態勢に、
赤葦の方は狂暴化し制御不能、全てを殲滅し尽すだろうとの、確度の高い終末予測から、
ガッチリ黒赤がコネクトするまで、家系御三方の関係は、未だ極秘扱いだ。

「クロは、俺の関与に薄々気付いてるけど、見て見ぬフリするだろうから、大丈夫。」
「川西痛恨のミステイクだって、平謝りだったけど、大丈夫なら一安心だよ~」

東京駅で、青根さんから黒尾さんに手渡してもらった、北家への乗換案内。
元は孤爪さんが走り書きしたメモで、折を見て川西が書き直す予定だったが、
あまりの急展開に、原本をそのまま青根に託すしか、方法がなかったらしい。
見覚えのある字だが、川西のものじゃない。もっと昔から、よ~く知ってる字だと、
聡い黒尾さんなら、すぐに気付いて…気付かないフリが最善策だと判断するはず、と。


兎にも角にも、巧くいって良かった~
俺独りで、腹黒&狡猾な黒赤コンビを出し抜くだなんて、絶対に無理だった。
さすがの孤爪さんも、腹を知り尽くした相手と、腹を隠し続けた相手には、苦心惨憺。
ホンっトーーーに、手がかかったね…と、安堵100%で苦虫を潰した。

ゴロリとソファに寝転がり、大あくびした孤爪さん。
放り投げたスマホを横目に、指を3本立てて天井に掲げた。


「『3』は、最も安定した最小数。」

平面は3点で成立。次元も縦横高さの3。
2つの異なるものを接続するには、第3の存在…コネクターが必要。
『自分』の認識は、自分以外の他人が1人でもいれば可能だけれど、
『自分達』という人間関係には、それ以外の第三者がいなければ、成立しない。

「人間関係が安定するのも、3人から。」
「3人寄れば、隠し砦の…文殊の智慧。」

3人集まれば、そこに『社会』が生まれる。
社会を構成する接続も、3本…三柱鳥居のように繋がり、しっかり存立できる。
『自分と相手』という2人だけだと、変化するのは困難を極め、共倒れの危険も高い。
だが、3人いれば、不動だった2人だけの接続が、柔軟に変わる余裕が生まれるのだ。

「月島・山口に、まさかの京谷。」
「及川・岩泉・牛島…幼馴染に、+α。」

黒尾・赤葦・宇内だけでなく、今回は様々な『御三方』社会が、巧く接続してくれた。
二口・京谷・月島の、ふきつトリオ。ラブリー・テイズル♪に、我らが天満宮トリオ。
既存の『御三方』はより深く繋がり合い、新たな『御三方』も、方々に誕生した。

「角名・赤葦・北の料亭爆睡御三方から、赤葦&北ペアが接続し…大波乱が幕開けて。」
「そこにクロが割り込み、まさかの超安定型御三方結成…黒&赤がようやく結ばれた。」

不動だった接続が、3になることで動き
接続した覚えのない3が、繋がりを完成

「人と人との繋がり…コネクション。」
「人間関係って、おもしろいねっ!!」


孤爪さんと一緒に、もう一度スマホを高々と掲げ、3本指を合わせてハイタッチ。
これにて、家系御三方『コネクション!!』プロジェクトは、堂々閉幕だ。

「本体の『コネクション!?』の方は、まだ仕事が終わってないんだけどね~」
「もうひと踏ん張り、頑張って。」

宇内・赤葦・黒尾の、バレー界を裏から牛耳る御三方も、いつまで続くかわからない。
俺の連載だって、いつかは必ず完結するし、配置転換(文芸部栄転)で担当が変わったり、
妖怪世代がプロ人生の幕を下ろす頃には、事業普及部さんも転職(元職復帰)してるかも?

どんなに安定した人間関係でも、いつかは必ず変わっていく。夫婦然り、御三方然り。
だから、繋がっている間の貴重な時間を、お互いもっと大事にしていきたいなぁ~って。

(物語は偶然の軌跡…奇跡の接続が人生。)

これからも俺は、毎週金曜の黒赤観察(改訂ラブラブ版)に精を出し続け、
心ゆくまで、2人のムフフを楽しみ尽くし、それから…


「連載打ち切りにならないよう、頑張る!」
「お願いだから、それはちゃんと続けて。」




- 完 -




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2025/02/09