猫梟合宿~一匹一羽(前編)~

「徒弟、みたいなものですか?」
「まぁ、そんなようなもんだ。」


世の中には、自分独りではどうにもならないことがある。

そのうちのひとつが、子育てや教育。
自分ちのガキならまだしも、大切にお預かりしている場合は、責任重大。
そろそろ成人する年頃の高校生だとしても、俺達から見ればまだまだ『子ども』だ。

どんなに背伸びをしても…背伸びする必要が全くないほどデカくても、内面は年相応。
パッと見は年齢不相応にしっかりして、大人びていても、『オトナ』なわけじゃない。
むしろそういう『ちゃんとしっかりした』奴ほど、不安定で危ないこと。
そして、オトナの言うことにはなかなか素直に耳を貸さないことを、
本当のオトナほど、痛いほどわかる…自分独りでは、上手く手を貸してやれないことも。

(難しい年頃…いや、自分の力不足だな。)

独りじゃダメな時は、自分よりオトナたる年長者の智慧をお借りするのが、最良の道。
自らの力不足を認め、素直に教えと助けを請うぐらいには、俺も十分オトナになった。
恥かしいとか情けねぇとか、ちっせぇ俺のメンツなんて、どうでもいい。
大事な『我が子』のためなら、恥ぐらい喜んでかいてやるぞ!

(とは言え、緊張はする…よな~!)

景気付けに、一杯。
冷蔵庫から(発泡酒ではなく)ビールを出し、柿ピーとジャーキーを手にコソコソ書斎へ。
しっかり咀嚼し、ぬるくなった残りのビールで流し込み、受話器を手に取った。


「あ、夜分恐れ入ります!梟谷の闇路です。
実は猫又監督に、折り入ってご相談が…」



*****



「というわけで、今日から三日間の猫梟合宿は、猫&梟の一匹一羽行動を厳守な!」
「えーー!?何だそりゃ…面白そうっ!!」


一匹一羽?何だ、それは。
文字通り、猫と梟が一人ずつペアを組み、三日間ベッタリ一緒に過ごすだけだろう。
闇路監督、またしょーもないことを思いついて。木兎さんを喜ばせるだけじゃないか。
ウチで手に負えないからと、猫の手までお借りしようだなんて、一体何考えてるんだか。
どうせ、晩酌中にテキトーなTVだかを見て、酔った勢いとノリで決めたんだろうけど。

(たった三日。テキトーに流せばいい。)

御猫様にお手間をとらせず、多少の友好関係を築き、猫共の内情を密かに探れれば良し。
そう割り切れば、どうってことない『わくわくイベント』だろうけど、気懸りが一つ。

(猫又監督が、何故…許したのか?)

木兎さん達の親父だけあって、闇路監督は『わかりやすい人』だが、猫又監督は違う。
俺如きでは、その穏やかな表情からは、おひげの動きすらまるで読み取れない。
老獪な妖怪猫が、毎度お馴染みとはいえ、梟の『わくわく』に御手を貸した理由は?

(要警戒レベル…3、ぐらいでいいかな。)

次々と一匹一羽ペアが発表される中、息を潜めつつ鷹揚に構えて思考を巡らせていたが、
自分の名前と、ペアの『一匹』の名を呼ばれた瞬間、警戒レベルをMAXに引き上げた。


「んじゃ、ラストは…赤葦&黒尾!」



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