「劇場版、大ヒット上映おめでとうっ!」 「ありがとうございます。」 「ありがとーーーーーっ!かんぱ~~~いっ!」 宇内天満作『メテオアタック』は、連載当初の予定(期待)を大幅に裏切るカタチで、大ブレイク。 あれよあれよという間に、アニメ化そして映画化。今や国民的超人気コンテンツへと成長した。 「これも全部、出版社さん…敏腕鬼担当編集サマのおかげだよ~!」 「いえ、ウチは当然のことをしたまで…協会さんの御助力あってこそです。」 「いやいやいや、やっぱりそこは創作者本人と…愛読者様が一番、だよな!」 うぇ~~~い!!!と盃を高く掲げ打ち鳴らす。 だが乾杯の一口で喉を潤すと、すぐに三人はグラスを静かにテーブルへ戻し、グッタリ項垂れた。 「マジで、おつかれさん…っ」 「冗談抜きで、死ぬかと…っ」 「生きてるのが、不思議…っ」 漫画や雑誌等の出版分野だけでなく、各種リアルイベントや協会、企業様との多種多様なコラボ。 グッズ展開にフェア…メテオタ(メテオアタックオタクの略?)ガチ勢でも情報を追い切れないほど、 ありとあらゆるジャンルへのメディア露出…その中核を担った三人は、ほぼ生きる屍状態だ。 「三人での、毎週金曜恒例宅飲み会も、すっげぇ久しぶり、なんじゃねぇのか…?」 「一日と開けずに会ってましたけど…栄養ドリンクを飲み交わしただけですよね。」 「おやつはずっと、オマケ付のチョコ…つまみとか煎餅ともコラボしたかったね~」 大ヒット記念に、焼肉でも行って来い!と、編集長や協会長から金一封も二封も三封も貰ったが、 そんな食欲はどこにもなく、ただただ部屋でゴロゴロしたい…年度末修羅場明けの建築業の如く。 逆に今、一番したくないのは、仕事の話。映画のことだけは、できるだけ考えたくなかった。 黒尾は床に座ってソファに背を預けながら、塩味のリング状スナックを指につっこみ、 食べるでもなく、ふりふり…大あくびしながら宇内先生に話を振った。 「興行収入とか、印税とか、今はどうでもいい。 何か別の…副次的なイイコト、あったか?」 「副次的な、イイコト…」 ぽーん、ぽーん。塩味リングを上へ何度か放り投げ、宇内先生はしばし黙考。 お口で見事にキャッチして、もぐもぐもぐもぐ…やけに多めに咀嚼して飲み込み、小さく苦笑い。 「コッソリ投稿してる二次創作の閲覧数が、ちょっとだけ増えた…かな?」 「『うだうだてんまつ』名義の…?」 宇内天満は職業漫画家。ごく個人的な趣味として、二次創作を愉しんでいる。 社会的認知度の高い『宇内天満』の名で、『漫画』を全世界に大公開できるわけもなく、 同業者様等に御迷惑をかけないよう、自作『メテオアタック』の二次創作『小説』等を、 『うだうだてんまつ』の名で執筆し、昔懐かし個人サイトでひっそりUPしているところだ。 「文章の方はてんでド素人ですが、奇特な読者様も数人いらっしゃる…ありがたいことです。」 「SNSには絶対出さないけど、投稿系サイトには、ほんのちょっとだけ公開しててさ。」 「映画化をきっかけに、メテオ熱再燃。二次創作も活況になったってわけか。よかったな~!」 俺も見たぜ~? 某飲食店様とのコラボが発表されるやいなや、SNS上にそこの制服着たキャラ絵&文が激増! 公式さんの告知を見ようとしただけなんだが、その下とかに『おすすめ』で…びっくりしたぞ。 「最近は、タグを付けてなくても…賢いAIさんが自動的に関連を見出して『宣伝』するんだな。」 制服着てたり、それを、ぬっ、脱いだり… 二次を全然知らねぇ人の方が多い、協会の会議中のモニターに、ソレがドン!と出ちまってさ。 自分でも寒気がするぐらい、黒尾鉄朗史上最光度のキラッキラな笑顔でスルーしたぞ。 「個人の趣味嗜好は尊重すべき。表現の自由も守るべき。ただし、公共の福祉に反しない限り。」 俺は元々、法律畑の人間だ。 好き嫌いや考えを、自由に発言したり共有できることの重要性は、痛い程わかってるつもりだ。 だからこそ本人に『そんなつもり』はなくても、誰かの権利を侵害したり、傷付ける恐れのある… 現状の『賢すぎるAI』『望まぬオススメ』は、ちぃとばかしバランスが悪いんじゃないかなぁと。 「良し悪しのバランスも、人それぞれだしな。」 黒尾はそう嘆息すると、隣で静かに聞いていた赤葦に視線を送った。 一次創作者の代表たる、原作者&出版社。そこに身を置く者は、一体どう考えているのだろうか? 赤葦は全指にはめ込んで遊んでいたリングを、一気に口の中に放り込むと、 ぬるくなったビールではなく、常温のチェイサーで流し込み、淡々としゃべり始めた。 「一次だろうと二次だろうと、創作者… ものづくりをする人を、俺は尊敬してます。」 それを大前提として、著作財産権者の立場から、少し俺の考えを述べてみます。 (あくまでも、俺個人の考えであり、編集者や出版社の総意や見解では、ありませんからね。) 原作者の宇内さんとウチの出版社には、『メテオアタック』を使ってイロイロと金儲けできる、 『著作財産権』という権利があり、今回の映画化も、数ある権利のうちのひとつです。 この権利は、権利者が許諾を与えることで、第三者が利用することができます。 メテオアタックの名やキャラクター、セリフ、象徴的モチーフ等、作品にちなんだものを使って、 グッズやメニューの制作・配布を行う等、各種企業様とのコラボ企画が、これに該当します。 ちなみに、弊社のホームページにも、著作権や商標に関するお問い合わせページがありますが、 そこに明記してあることを、ごくごく端的に申し上げますと… 「有償・無償に関わらず、許諾が必要なこと。 そして、法人・団体・企業以外の『個人』には、許諾を与えないこと。」 〇〇界隈の解釈主様とか、お誕生日席常連サークル様とか、数万フォロワー保有の神絵師様でも。 影響力の大小に関わらず、『個人』相手には、著作権者が許諾を与えることはありません。 原作が漫画の作品を、絵や漫画という表現方法で二次創作し、それを公に広く行き渡らせることは、 法的にはアウト…宇内先生や弊社の権利を侵害していることは、紛れもない事実です。 また、『メテオアタック』のアニメや映画を制作して下さっているプロダクション様の方は、 たとえ非営利個人サイトであっても、自作の二次創作イラストや文章を掲載することを明確に禁止。 『メテオアタック』を元にした二次創作を、インターネット上へ公開している時点でアウトです。 「ウチ以外にも、著作財産権の権利者がいる。 絶対に忘れてはならない、重要な点です。」 公式画像や漫画のスクショ、アニメやTV番組の録画や写真を、許可なくSNS等に上げることは、 海賊版は無論、実際は二次創作以上にアウト…そこらじゅうでフツーに見かけますけどね。 今は黙って見逃していても、それも許さない風潮が来ないとは限りません。ここでも難しいのが… 「バランス、です。」 スクショでの拡散による権利侵害よりも、メリットの方が大きい場合だって、多々あります。 大々的に宣伝広告費をつぎ込まなくとも、クチコミで広まってくれますから、オイシイですよね。 いかに『人づてに広める』かという手法が、マーケティング。タダの情報は遍く広告ですよ。 「何度でも言います。タダの情報は広告です。」 それと同様に、個人による二次創作の盛り上がりも、作品への人気に直結します。 いかに二次人気を促すか…『そそる』エサを意図的に撒くことだって、無きにしも非ず? 書店に並ぶ商業アンソロジーは、商業の名の通り、出版社が発行しているものですからね。 そもそも論として、一次だろうと二次だろうと、何かを生み出す『創作』がいかに大変か、 出版に携わる人間は、熟知している…二次創作者さん達も、同じように尊敬しています。 「企業と個人は、許諾の有無という違いはあれ、二次創作者という意味では、変わりません。」 大事なのは、バランス。 権利侵害(法律違反)を犯した犯罪者だから、その人を蔑んだりバッシングしていいわけじゃない。 二次創作自体がアウトなんだから、それをパクってもいいなんて強弁も、通るわけありません。 法が何を守ろうとしているのか、その目的(本質)を常に念頭に置いて、総合的に判断すべきですし、 その判断つまり理非を分かつことができるのは、裁判所だけ…個人がやるのは、ただの私刑です。 ま、それはいいとして… 「著作財産権者としての権利を行使するより、見て見ぬふりをする方が『財産的に』おトク。 出版社等としては、二次創作を利用している面が絶対にないとは、言い切れないんです。」 勿論、どんなものでも、やりすぎは問題です。 ウチがお目こぼししても、ウチ以外や税務署様が見逃してくれるとは限りませんから。 余談ですが、個人間取引…SNSでのグッズ譲渡も、そのうち税務署様が黙ってないでしょうね。 つまり、著作財産権者達は、目的…金儲けのために、権利と侵害のバランスを図ります。 そして、この態度こそが、別の大きな権利…著作人格権の侵害に加担している可能性があります。 「『メテオアタック』の創作者…宇内先生だけが唯一持つ、保護すべき権利です。」 漫画、小説、美術、音楽、写真、アニメ。 それを作った人の思いや考え、気持ちを、他人のマネではなく自分の創意工夫により、 漫画や小説等の『作品』として表現したものを、著作物といいます。 作品として表現された、作った人(著作者)の考えや気持ち、即ち『人格』をまもるために、 『著作者人格権』という権利がある…著作権法が本来保護しようとしているのは、こちらの方。 『メテオアタック』で金儲けする権利(財産権)は、第三者(出版社や制作会社)に譲渡できますが、 たとえ財産権を譲ったとしても、人格権は宇内天満だけが持ち続けます。 「バレーはおもしろい。バレーやろうぜ!」 『メテオアタック』が伝えたいことは、突き詰めればここに尽きます。 宇内さんが本当はどう考えているのか、宇内さん以外の人間が完璧に把握することは不可能です。 宇内さんの思いをできるだけ正確に汲み、その思いを共有し、作品として表現し伝えていく。 創作者と意思疎通を図り、各所と連携…『繋ぐ』のが、担当編集者たる俺の責務です。 「本来であれば、宇内さんの描きたいように、自由に描いてもらうのが、正しい姿なんですが…」 「出版社、制作会社、TV局、協会。様々な権利を調整して『繋ぐ』のも、接続者の仕事…か。」 対立する権利同士のバランスを図り、繋ぐ。 仲介や代理といった仕事が、特殊な知識を要する国家資格であることの理由も、わかります。 自分の自由をまもるためには、自分以外の人の自由も、同じようにまもらなければいけません。 権利者達が意思疎通を疎かにし、バランス調整に大失敗してしまうと、とんでもない悲劇を生む… 「そういう事件が、実際に…」 「起きてしまった…」 「………っ」 この事件に関しては、俺の考えや思いを言葉として表に出すことは、しません。 正直に言えば、権利が対立する立場にもなり得る宇内さんを目の前に、口にする勇気は…っ ただ、ひとつだけ、絶対に伝えておきたいのは、その、えーっと…何と申し上げればいいのか…っ 「赤葦だけは、宇内先生を裏切ったりしねぇ。 俺は、そう確信してる。」 思いを伝える言葉を探し、惑う赤葦。 その横から、黒尾がきっぱり、断言。 強い言葉に、目を閉じて頷く、宇内。 「黒尾さんが、そう言ってくれるなら…安心。」 「い、いや、俺の単なる、勝手なアレだが…っ」 「わかってる。それでも、俺と赤葦さんを繋ぐ緩衝材…あー、じゃなかった、 『接続者』たる黒尾さんがそう思ってくれてることが、凄く嬉しいよ。」 「………っ」 宇内の澄んだ瞳に、声を詰まらせた黒尾は、同じく無言で俯く赤葦にティッシュを渡しながら、 今度は創作者としての意見を聞かせて欲しいと、宇内に視線で促した。 「俺が創った『メテオアタック』の世界を、いろんな人が、いろんな形で二次創作すること。 そのことについて、『宇内天満』としての意見や思いを、俺は…言わない。」 自分の思いや考えを表現することも、逆に公表しないことも、まもるべき自由…そうでしょ? 思いや考えを、感情のおもむくままにソッコーで表出するご時世だけど、俺には向いてないし。 だから、ただの一個人…二次創作者『うだうだてんまつ』として考えたことを、言うね。 あ!当然だけど、俺も三人の宅飲みを通して、黒尾さんから『法的ものの考え方』を学んだから、 ネット上に流布する出所不明の噂や、一方だけの言い分、世間様の豪語する常識だとかじゃなくて、 事件が起こってから、自分の頭でじっくり考えたことだけを、拙い自分の言葉で話すから。 「俺、二次創作するのが…怖くなった。」 今回の事件は、著作者人格権を持つ原作者と、著作財産権者の出版社・制作会社・TV局・脚本家等、 いろんなカタチの『著作権』が複雑に絡み合い、そのバランス調整が上手くいかなかった… そういう見方をすることもできると思う。実際、原作者へのリスペクト云々が、多勢の意見だった。 「ちゃんと法的に認められた『権利』を持つ者同士でも…だからこそ、調整って本当に難しい。」 じゃあ、権利を持たない者は? 法的には完全アウトな、一個人の二次創作は? 本質を見れば…唯一無二の著作者人格権を持つ原作者から見たら、 許諾があるかないかっていう違いはあれど、アニメやドラマも、表現方法を変えた『二次』作品。 「著作権法では『二次的著作物』…ですね。」 「原作者の許諾があるものが二次的著作物、一個人の無許可作が二次創作。大まかに言えばな。」 名前はどうあれ、原作者から見れば、全て二次。 自分が創った世界やキャラが、意に沿わない大幅な改変を加えられてしまう可能性がある点では同じ。 むしろ、許諾に関われない個人活動の方が、原作者を傷付ける恐れが高いと言わざるを得ないよ。 もう著作権は残ってないけど、アンデルセンが『人魚姫』で伝えたかったことは、本当にこれ? アンデルセン自体が、アニメ映画を見ることはないだろうから、まだマシと言えるかもだけど、 原作者が生きてて、見ようと思わなくても…見たくなくて意識的に遠ざけていたにも関わらず、 賢いAIとか、影響力のある拡散者達の『親切』や『善意』で、それを見てしまった時。 「原作者は一体、どう思うんだろう? そのことを、今回、深く考えたんだ。」 前々から、考えていたことではあるけど。 自分の楽しさを優先して、結局そのまま… 拡散力・即時性の高いSNSには載せない。投稿サイトにも一部だけ。個人サイトも検索除け済。 自分なりにできる範囲で、見たくない人や無関心の人の目に触れにくい工夫は、してきたつもり。 (創るのは大好きでも、見るのは苦手…そういうタイプの創作者だって、割といると思うし。) 個人サイトだからって、有料のR18コンテンツに誘導したりしない、ごく慎ましいもの。 「でも、たとえ鍵付アカウントとか、パスワード制の個人会員サイトだったとしても…」 「ネット上に公開してる時点で、プロダクションさんの著作財産権を侵害しているし…」 「見ようと思えば、見られます…開示請求だって可能、ブロックされたら別垢から覗けます。」 自分の自由な愉しみと、承認欲求を満たすため。 そのために、原作者さんを大きく傷付けているかもしれないことを、改めて考え直したんだ。 そしたら、もう、怖くて怖くて…サイトごと全部消しちゃおうかと、毎日毎日考えてた。 そして、ひたすら考え続けて、ようやく捻り出した結論は… 「ずっと、考え続けながら…創り続ける。」 「…っ!!」 歴史を見ても、全くのゼロから文化や創造がパっと生まれてくるわけじゃない。 何かしらの『もと』があって、みんながいろいろ考え、壊して変えて創って、発展させてきた。 二次創作だって、キツくてツラいことの方が多い『ものづくり』…一個人が生み出す文化だよ。 グッズを用いた『ぬい撮り』も、写ってない部分に物凄い苦労と工夫がある『作品』だもん。 「お金と力を持ち、許諾を得られる企業だけが、堂々と創作していい?…そんなわけ、ない。」 サイトを消したり、創作をやめるのは簡単。もう、いろいろ考えなくてすむから、ラクじゃん。 でもそれじゃあ、単なる思考停止。考えることをやめたら、自由な人間として一番アウトかも? これからも俺は、時勢と状況を鑑みながら、公開方法や有無を、その都度その都度、考え続ける。 他人の自由と権利…気持ちとのバランスを取りながら、自分の自由『ものづくり』を、続けるよ。 「だって…好きなんだもん。」 もちろんこれは、俺…『うだうだてんまつ』に限った話だよ? 他の人がどう考え、どんな風に創作し、どんな形で公開するかは、人それぞれ。 みんなが自由に、自分の頭で考えて、決めれば良いこと…ウチはウチ、ヨソはヨソってだけ。 正直、『うだうだてんまつ』の作品は、二次創作としては不人気。パッと見の面白さは皆無。 今、この飲み会で語ったような、クソ真面目な考察なんて、二次創作を見に来た人向けじゃない。 ニーズに合わない手法で、思いや考えを表現してるんだから、そりゃ不人気で当然だよね。 「まぁ、呑みの場のグダグダなんて…なぁ?」 「エッセイにするぐらいが、関の山ですね。」 需要と供給に合わせて創作するのは、商業に任せればいい。それは『宇内天満』の『仕事』だ。 そうじゃなく、好きなことを、必死に考えて自由に創るのは『うだうだてんまつ』の『趣味』。 今後も投稿サイトには、ほのぼの系のものだけを、時々UPするに止めておくし、 個人サイトにも、作品の全てを公開しない…っていうか、ものづくりは失敗の方が多いからね~ お披露目できる完成品より、ものづくりの過程…試行錯誤そのものが、楽しいんだもん! 「赤葦さんと悶々、あーでもない、こーでもないと妄想?構想?するのが、一番楽しいターン。」 「それは、確かに。ものづくりの醍醐味ですね。公開なんて絶対できませんけど。」 「楽しみを全て、共有・公開する必要、ねぇよ。俺らの宅飲みダベりと一緒でな。」 ま、そんなこんなで。 映画化で多少は閲覧数が増えたけど、そもそも投稿サイトで作品を探す人が既に少数派。 その中で、大人気作家でもない俺の作品を見て、さらにわざわざプロフィール欄を確認し、 個人サイトまで来てくれる人なんて、やっぱりごくごくわずかだからね~ 考えに考え抜いた、思考過程…工作途中のモノに興味を示し、一緒に考えてみようかなって人は、 考えることが大~~~好きな、どこぞの偏屈な鬼編集級の変人マニア(敬称)でしょ? 「俺が大好きな赤葦京治なら、10作に1作ぐらいは、興味を持ってくれそう… そんなものづくりができれば、いいな。」 「ーーーっっっ!!! 100作に2作。俺の…な『うだうだてんまつ』なら、その程度の成功率で、十分です!!!」 レコーディング、行ってきます! 赤葦はそう叫びながら、箱ティッシュを抱えてリビングから飛び出した。 「れ…、レコーディング???」 「録音、即ち、音入れ…おトイレだろ。」 ド直球賛辞に照れ照れ恥ずかしがっちゃって、アイツも意外と可愛いトコあるよな~! 黒尾は柔らかく微笑みながら、胡瓜のぬか漬けをぽりぽり。そして、ゆっくり口を開いた。 「今回の事件、赤葦も相当、考えたと思う。 だから、今の先生の言葉…キたと思うぜ?」 アイツ、これみよがしな感動モノには、心を動かされねぇ。逆に『スン…』ってなるタイプだろ? でも、じっくり考えさせられる話を、実際に自分でも考えた時にこそ、大きな感銘を受ける。 グダグダでクドクドで、二次創作には全く向かねぇのは、俺にもよ~~~っくわかったけど、 どっちかっつーと、俺も赤葦と似たタイプ。感動を頂戴するより、自分で考えて浸りたい方なんだ。 だから、考察系『うだうだてんまつ』の小説、ちょっと読んでみたくなった…ほれ、出してみろ~ 「俺に見せるのは、恥かしいかな~?」 「いや、恥かしいのは、黒尾さんだと思う。」 「…は????」 「恥ずかしさのあまり、録音行っちゃうよ?」 俺も、繋ぐ。 俺だって、接続者。 赤葦さんを通じ、俺と黒尾さんが繋がったように。俺も二人を繋ぐ接続者でありたい。 えーっと、こういうの、何て言うんだっけ…? 「子は、かすがい?」 「お前はいつから、俺達の子になったんだ!?」 「…みたいな、話。」 「ぇ………えっ!?」 - 終 - *********** 2024/02/24