接続奪取





接続奪取




俺の作品、公開しない方がいいのかも
評価対象外の、全然面白くないものを
お見せするのは…時間を奪ってるだけ


「…とまぁ、いつも通りのドツボでして」
「うだうだてんまつ…趣味の方が、だな」

赤葦京治が担当する宇内天満は、売れっ子漫画家。週刊少年ヴァーイの看板作家だ。
人気、実力、面白さは折り紙付き。日本を代表するスポ根漫画家に成長している。

だが、そんな宇内先生が、趣味で創作している『うだうだてんまつ』名義の小説は、
全くもってうだつの上がらない、おそまつなもの。実に些末で泡沫な存在だ。
全世界拡散型SNSに投稿せず、検索除け済みの個人サイトをメインにしていたり、
ごくたまに、一部のみ創作系SNSにログイン限定で投稿するだけという声の小ささも、
世間様に認知されない一因ではあるものの、それは作品の質や面白さとは無関係。

「読者は宇内さん本人と、俺ぐらいです」
「重度の活字中毒者向け、ってことだな」

世間様の需要にまるで合っていないことは、百も承知。
勇気を振り絞り、恐る恐る公開してみても、結果はいつも同じ。後悔するだけ。
投稿して、完全投降。閲覧して頂けただけでも御の字。評価だなんて、滅相もない。

「評価対象にすらならないものを、わざわざ創作専門投稿サイトで公開するのは…」
「検索し、閲覧して下さった方々の、貴重なお時間を奪うだけなんじゃないのか…」

「宇内天満の漫画も、赤葦さん達のお膳立てがあるから、見てもらえてるだけで…」
「黒尾さん達の公的お墨付きがなきゃ、漫画ファン以外には、認知すらされない…」


毎週金曜の、打合せ後の宅飲みでも、定期的に出てくるイカ耳ならぬ、耳タコの愚痴。
聞き慣れた宇内のうだうだを、二人で完コピし、ふぅ~と歎息。
きっと明日の宅飲みでも、ぐだぐだと黒尾に甘え散らかすのが目に見えていたから、
赤葦は先に手を打つべく、黒尾を個室居酒屋へ誘い、久々のサシ飲みを企てた。

「黒尾さん。明日は宇内さんを甘やかし過ぎない程度に、甘えさせてやって下さいね」
「まかせろ。いつもより薄めの焼酎にして、甘いモン食わせて、早めに寝させような」

「いつもいつも、本当にすみません」
「いいってことよ!気にすんなって」

結局自分も、黒尾さんに甘えちゃってるだけなんですけどね、と俯く赤葦の皿に、
黒尾は串から外した焼鳥を半分乗せ、隅に柚子胡椒をちょんちょんと添えた。

「俺も出世したなぁ~!あの赤葦京治に、信頼された上、甘えて頂けるようになるとは」
「俺も成長しましたよ。この赤葦京治が、腹黒相手に弱みを見せるフリができるなんて」

「…あ~ん、してやろうか?」
「…柚子胡椒、特盛ですが?」

パイセンからの『可愛がり』を受ける寸前、赤葦は黒尾の皿から砂肝を奪い、
これでもかというぐらい柚子胡椒をベッタリ塗りたくってから、黒尾の口に先制あ~ん。
コーハイからの可愛い『感謝のキモチ』に、黒尾は感涙しながらビールをごくごくごく。

「パイセン、おかわり注文しときましたー」
「気の利くコーハイで、泣けてくるよっ!」

場を包み始めた、少々重みと湿り気のある空気を、カラっと転換してみせた二人。
高校時代から磨き続けた、熟練の連携プレーに、視線だけで互いに称賛を贈り合う。
おしぼりを渡しながら、慣れた手つきで冷奴と赤魚の煮付を注文してくれる赤葦に、
黒尾は受け取ったおしぼりの中に、そっと微笑みを零してから、話を続けた。


「読者様の大切な時間を奪う…か」
「今や、閲覧者様が、神様…です」

閲覧者の注目をより多く集めるものが、有益で『良い』ものだとされる、拡散型SNS。
流れゆく膨大な情報の中で、何よりもコスパとタイパを重視する、賢い閲覧者様方が、
その指を止め、貴重な時間を削ってまで、拡散やいいねボタンをタップする程の情報は、
きっと有益で良いものに違いない…だから皆も右に倣い、どんどん広がっていく。

「みんなが良いと言ってるから、良い」
「数こそ、価値基準。中身よりも、な」

それが本当に良いものなのか、自分でしっかり考え、自分の基準でちゃんと判断しない。
そんな効率の悪いことをしていたら、時流に乗り遅れ、置いて行かれるどころか、
これ見て良いと思わんかった奴、ヤバくね?と、見る目がない認定されるかもしれない。

「考えるな、感じろ…なら、まだマシだが」
「ただの、反射…スマートな最適化ですね」

「そういう世間様の習性を熟知した上で、上手く利用しているのが、俺らみたいな奴だ」
「閲覧者様の指を止め、時間を奪えたら、勝利。プロモーション大成功、売上増大確約」

SNSや投稿サイト等のプラットフォームの目的は、閲覧者の注目を集め続けること。
タダで作品見放題かつ、タダでチヤホヤされるシステムに、一般人を引き込むことで、
競争心を煽り、購買意欲を高め、広告主からの利用料を引き出すビジネスモデルだ。

「有益な情報が、向こうから流れてくる」
「それを見て、つい欲しくなり、ポチリ」

「素敵な二次創作を見て、原作が気になり」
「無料で見てハマり、続きとグッズも購入」

「自分から必死に情報を探し、集め、判断する時間的コストをかけなくてすむ反面…」
「自分の世界がカンタンに広がり、アッサリ知って、とりあえずハマって…出費増大」

お金が減るぐらいは、経済を回したと豪語して、愉しむのもご一興。さほど悪くはない。
こちらはすこぶる便利なツールを、なんとタダで!!利用させて貰う代わりに、
広告主という巨大魚を引き寄せるためのエサを、自ら喜んで差し出し、自らも食われる…
創作投稿サイトでは、自作の下に、おすすめという形で『もっと上』のリンクがあり、
行きつく先は、サイト自体が商業化している作品。広告貼付のための、一般人の作品だ。

「タダなのは、ちゃんと理由があります」
「タダ情報は、あまねく広告なんだよな」

それをわかった上で、賢く楽しく適度に使うのは、もちろん個人の自由。
プラットフォームにお金を払う代わりに、時間を払っているだけの話である。


だが、楽しいのはほんの一時。すぐに『どん詰まり』の現実にぶち当たる。
特にオタ活界隈では、笑いごとでは済まされない、深刻な沼に陥りやすい。

「イベントやコラボカフェ参戦、戦利品の写真に、いいねをたくさん貰えて嬉しいが…」
「痛バや祭壇作りのため、同担や転売ヤーとの闘い、お取引レートの煩わしさに…辟易」

「自分で個人サイトを構築し、管理の手間もなく、サーバー契約もしなくてすむ…一方」
「数多の人に見てもらえて、チヤホヤして貰える…自分以上の人達が、もっとたくさん」

否応なく自尊心と競争心を煽られ続け、より本能に近い承認欲求を掌握され、
時間とお金どころか、心身まですり減らしてしまい、楽しみを感じられなくなってゆく…

「高額なランダム商品濫発。数での殴り合いを制すには、箱を積み上げるしかない」
「いいねを貰うには、著作権だの青少年保護だの規約だの、構っている余裕はない」

「勢いに流され、同じ絵柄の使い回しでも購入、届いたグッズを開ける余裕すらもない」
「旬ジャンルの旬カプじゃないと、見向きもされず。皆が求めるものを、供給し続ける」

痛バや祭壇のサイズは巨大化、他人を蔑むことでしか、自分を上げられなくなることも。
終わりなき新商品、増え続ける推し、出費よりも物理的に嵩む、お宝と迷子(在庫)達。
どんなに頑張って新たな創作をしても、お馴染みのド定番ネタの方が結局ウケが良い。
それよりも、鮮度が命。需要に合ったものを早くたくさん…AIに敵うわけがない。

疲弊しきって、気が付いた時には…

「なんのために、推し活してんだろ?」
「なんのために、描き続けてんだろ?」


本来、創造的な分野であるはずの趣味を、ビジネスモデルに引き込んだ時点で、
先は長くない…文化そのものが衰退し、ビジネス自体も、同じ道を辿るしかないのだ。

「XだかPだか、どんなに隆盛を誇ったプラットフォームだろうと…」
「栄枯盛衰…YだかQだかに代わるだけで、結局長続きはしません」

今、上手くいっているように見える、拡散型SNSを使った販促プロモーション。
だが、プラットフォームが廃れてしまえば、当然、意味をなさなくなる。
時流に乗ってもてはやされてきた漫画やアニメといった文化も、プロスポーツも、
そのコンテンツ自体を、ちゃんと魅力あるものに育てていなければ、共倒れ必至。

「俺達が、ちゃんと大事に、育てなければ」
「十年後も、繋がっているか、わからない」

うだうだてんまつの、しょーもない愚痴?
いや、違う。自分達にとっては…
自分達の方こそ、リアルな死活問題なのだ

「少なくとも十年。もっと先を見据えて…」
「文化を繋げるってのは、簡単じゃねぇ…」

「グッズ販売やコラボで儲けたって、良作と作家さんを大事に育てなければ、先はない」
「アイドル的な人気をアテにするんじゃなくて、球技そのものの楽しみを伝えねぇとな」


三人での宅飲みで、この話題が出た時も、宇内がグズって甘えてそのまま寝落ちコース。
ベッドに運んだり、後片付けしたりで、ここまで深く考察したことは、あまりなかった。

いずれちゃんと、『うだうだごと』ではなく『じぶんごと』として考えなければと、
杯を重ね、年を重ね、経験を重ねるにつれ、常々思っていたが、やっとその機会が到来。
積年の願いが叶ったことを互いに察し、それがまた嬉しくて、杯を重ねていく。

「お堅く真面目で、飲みのアテとしては不向きなネタだとは、十分承知していますが」
「こういう真面目な考察を、じっくり真剣に語り合えるのは、ありがてぇことだよな」

「昔から、変わりませんね…俺達」
「梟谷グループ…小言ジジィ共だ」

コツン、と小さくお猪口をぶつけ合い、穏やかに微笑み合う。
しょーもない愚痴を語り合うだけなら、ただの飲みダチ。仕事上のよくある付き合いだ。
だが、面倒な考察も厭わず、議論を尽くせるという点で、二人の繋がりは…

(もっと先を、見据えても…?)
(繋がっていられる、関係…?)

(こっちの方も、そろそろ…?)
(積年の何とやらを、その…?)

チラリと相手の顔を窺うと、同じタイミングでチラリ。苦笑いが零れ落ちる。
そうカンタンに、探らせてたまるかと、満面の笑みで酌を勧め合う。

「笑顔のくせに、鉄面皮。恐ろしい成長だ」
「身近に鉄面?反面教師が、いますからね」

「素敵なパイセンの、薫陶を受けたんだな」
「無敵のコーハイに、育ってしまいました」

「どおりで、相性抜群なわけだ」
「ですね。異論はありませんよ」

まばゆいばかりの笑顔で、わさびをたんまり乗せた蒲鉾を、互いの口に突っ込み合う。
噴き出したいのを必死に堪えて飲み込んでから、涙目で大爆笑。いや~、楽しい!

「もうホントに、おバカですよねっ!」
「あ~、すっげぇ、スッキリしたっ!」

時には真面目に語り、時には何も考えず笑い合い。その両方ともが、リラックスタイム。
もう十年?十五年?歳を取ったら、この関係が幸せだと、素直に言い合えるだろうが、
今はまだ、絶対に言ってやらない…『ず~っと先』を見据えた、楽しみにとっておこう。


「さて。結論として、宇内さんには…」
「いつもどおり…甘やかしてやろうぜ」

短絡的に便利で簡単なものに飛びつかず、自分でしっかり『ものづくり』を頑張ること。
それができる人は、環境がどう変化しようとも、趣味を楽しく続けられるはずだ、と。

「ものづくりをしている自分が好きなのか」
「ものづくりをすること自体が好きなのか」

「その違いを考える機会を、定期的に持つことができるというだけで…」
「ものづくりをするってのは、本当に貴重な体験…やっててよかったな」

閲覧者様の貴重なお時間を奪うことを、申し訳なく思っても、どうしようもない。
たまたま見た作品が好みに合わず、つまらなければ、途中で閲覧をやめるのも自由。
閲覧者様の需要に合わせて供給するのは、職業作家の仕事であり、個人の趣味ではない。
せめて、閲覧者様が自由に選べるように、投稿サイトの利用を今後も続けていこう。

「宇内さんには、ものづくりの楽しさを…」
「この先もずっと…大事にしてほしいよな」

ドツボにハマったら、美味いもん食わせて、俺らがチヤホヤ甘やかしてやろうぜ?
そうやって、緩~く続けているうちに、『宇内天満』文化も、この先に繋げられるさ。

「その間に、上達すれば良いんですけどね」
「くぅぅぅぅぅ~っ!鬼編集、厳しっ!!」

真顔でド正論を放ち、イイ雰囲気の予行演習をぶち壊した赤葦に、黒尾は天を仰いだ。
俺がせっかくカッコ良くキめたのに、台無しにしやがった!と相好を崩し、
してやったり顔でほくそ笑む赤葦の頭を、ガシガシ撫で回し、一転。
一応、確認のために聞いとくが…と、声を潜めて赤葦の耳元に囁いた。


「俺をサシ飲みに誘うと、俺の時間を奪ってしまうかも…とか、思ってねぇだろうな?」

安心しろ。たとえそうだったとしても
俺自身が心から望んで、選んだ時間だ
赤葦が責任を感じる必要は、全くねぇ

「…と、俺がお前を甘やかすと、思うか?」


思考を奪う、トロリと甘く優しい声。
それに蕩けたような視線を流しながら、赤葦は黒尾の首に腕を回し、囁き返した。

「あなたが手塩にかけて育てたコーハイは、そこまで甘ちゃんだと…本当にお思いで?」

ご安心下さい。お時間を奪ったことは
キッチリ責任を取って差し上げますよ
この先の、長い人生も見据え、必ずや

「…と、甘えて奪おうと、思ってますよ?」

いっそ、このまま…
互いの何もかもを、全て奪い尽くしてしまうのも、悪くないんじゃないか。
甘い視線を絡ませ合い、ゆっくり瞳を閉じ…互いに首を横に捻りながら薄目を開けた。


「えーっと、どういう意味だ?酔いが回っちまって、ぜんぜんわかんねぇ」
「すみません。俺自身も何を言ってんだか、いまいち脳が、回ってません」

「ってことに、今はしとこうな!」
「ですね。酔っ払い万歳、です!」



*****



「さーって、今日は…11だ」
「えーっと、ウチは…13?」


本日の居酒屋は、2時間制限。まだ全然飲み足りないし、話し足りない。
毎週末の宇内家での宅飲みは、毎回終電突破&そのまま寝落ちコースだし、
明日も同じコースが確約されているのに、どういうわけだか、まだまだ足りてない感。

時間は現在、8時過ぎ。
2軒目に行くか、それとも?と、駅に向かいながら、互いの最寄駅までの数を申告。
今日は黒尾宅の方が若干近いが、大差ない。それよりも…

「ここから二駅、徒歩圏内。久々に二人で飲みにおいでよ~、とのことですが」
「あぁ!言われてみれば、偶然にもここから近いなー!なら、お言葉に甘えて」

「どの口が言いますか。鞄の中に、菓子折をしっかり入れて来てますよね?」
「よく言うぜ。実家近くの店を指定してきた時点で、織り込み済みだろう?」

付き合いが長くなるうちに、互いの家でもしょっちゅう宅飲みしているし、
サシ飲みの後、近い方の家に上がり込み、ダラダラ過ごすのが定番、どころか。
互いの実家にも何度も行き、飲み食い寝泊まり。家族ぐるみの付き合いになっている。

何となく、ソレっぽいカンジではあるし、互いの家族もそれとなく、アレな雰囲気で。
ここ最近は、二人で実家へ行く度に、家族達が玄関でド緊張顔して待っていたり。

「酔った勢いで…驚かせてみるか?お宅の息子さんを奪いに来ました!って」
「間違いなく、その場に崩れ落ちますよ…盛大な安堵のため息をついて、ね」

「それなら、何もかも、正直に打ち明ける…実は俺達、まだ、清いカンケーです!」
「そっちの方が確実に、驚くでしょうけど…黒尾家も交え、大説教大会コースかと」


どういうわけだか、自分達よりもずっと、周りの方が『この先』をしっかり見据えて、
心の準備だとか、諸々の葛藤だとか、なんやかんやを、ちゃっかり済ませていたりする。

「俺、未だ、聞いてないのに…
昔年より抱き続けた、想いとやらを」
「俺だって、聞いたことねぇ…
積年に渡り、募らせてきた想いをな」

「外堀を埋め、既成事実化する策の方が…」
「先に成功しちまうなんて…計算外だった」

じっくり、じんわり。
趣味の創作を愉しむかのように、時間をかけて徐々につくりあげてきた、二人の関係。
焦らしているわけでもないし、完成形?を急いで目指しているわけでもない。
ものづくりと同じく、自分達に合ったスタイルを模索し、試行錯誤を繰り返しながら、
この先、どんなに環境が変わろうとも、揺るぎない『核』を、構築してきたつもりだ。

(Kでも、Pでも…)
(OK…なんですが)


よっこいしょ、と河川敷の石段に黒尾が腰を下ろし、すぐ横に赤葦も黙って座った。
月も星もない、明るい都会の夜空を、のんびり二人で見上げながら、黒尾が口を開いた。

「俺らの関係が、どういうものか。正直、定義付けする必要を、感じてねぇんだ」
「そんなもの、不要ですね。というよりも、誰かに説明する必要も、ありません」

「少しずつ時間をかけて、ちゃんと堅実に」
「二人の関係を、作り続けてきましたから」

好いた惚れたとか、そんな甘ったるい言葉では、到底言い表せない。
多分、人生経験をずっと積み上げてきた、互いの家族達も、それを察しているのだろう。

(もうちょっとしたら、俺らにも…)
(きっと、わかる。絶対に…わかる)


「本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございます…御挨拶のはじめはコレだよな?」
「今後ずっと、息子さんの時間を、俺が奪い続けます…御挨拶のおわりはコレですね?」

おいお~い。一体何の予行演習だ、これは?おやおや~?ついに、腹括っちゃいますか?
互いの脇腹にツッコミの肘鉄を食らわせ合わせていると、赤葦がふとその手を止めた。
ごく真剣な表情で黒尾を見つめると、ゴクリ唾を飲み込み、慎重に言葉を紡いだ。

「『奪』という漢字なんですが、衣服の中に入った雀を手で取り出す象形、らしいです」
「雀、すなわち酒、か。こりゃまた、じっくり考察しなきゃいけねぇ『肴』じゃねぇか」

赤葦の言葉に黒尾も真顔で唸り、すぐに二人の腿を同時に叩き、ビシッと立ち上がった。

よーっし、これから赤葦家での諸々の後…
その肴について、考察&寝落ちしようぜ!
そのためには、酔い覚ましと、脳を回す!
じゃ、そういうことで…いつものやつ!!


「赤葦家まで、ダッシュで競争ーーっ!!」
「諸々奪取できるまで、今夜は寝ません!」




- 終 -




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恋する動詞111題『27.奪う』


2026/02/28