密之佳日


「えーっと、こここっ、今年も、その…っ」
「おっ、お願いできれば…凄ぇ、助かるっ」


本日、10月16日。
初おデート、一周年記念。

ちょうど一年前の今日、お付き合いを始めて2ヶ月程だった俺達は、
実にどうでもいい口実にかこつけて、初めて二人きりで外出おデートを達成した。
それどころか、場の空気に流されて、ほほほっ、抱擁を交わしてしまいがてら、
お互いの誕生日を教え合うという、離れ業をやってのけた、アニバーサリー。

(あの頃は、若かった…っ)

アカでもクロでもなく、アオハルだ。
思い出を反芻する度に、羞恥心を募らせた俺達は、すぐに慎ましい関係に逆戻り。
何事もなかったかのように、普段通りの多忙な生活へ(否応なく)埋没しながら、
初おデートの記憶を盛大に美化しつつ、それとな~く封印してしまっていた。

その日に約束した通り、教え合ったお互いの誕生日には、一緒に晩御飯を食べた。
といっても、お互いの最寄駅の中間あたり、乗換駅裏の公園で、おにぎり&おでん。
お外でおデートの、2回目と3回目の大イベント。寒い中の熱々な思い出だ。

(あの時の大根の味…一生忘れない。)

それ以降も、多忙なアレコレをこじ開けながら、お外でコンビニ飯を食べて、のほほん。
季節のお惣菜やアイス等、お菓子も飲物もぜーーーんぶ、二人で半分こ…してやったり!
何を食べるか?も、勿論大事。でも、誰と食べるか?は、もっと大事。
更に言えば、誰とどんな風に食べるか?が、どれほど味と幸福感を激変させるか…痛感!

「いちご味…さほど甘くないんですね。」
「俺も、意外とイケると…今、知った。」

二人で半分こすると、苦手な甘味すら美味しく感じるし、甘けりゃ甘いで大騒ぎ。
アタリでもハズレでも、楽しいばっかり。イケる甘味発掘も、定番化してきつつあった。

「大根も つくねもスジも 甘味かな 鉄朗」
「半分こ 美味さマシマシ 甘美なり 京治」


そんなこんなで、約一年。
長引く暑さと、朝夕の冷えに揺れ動く頃、店先に並び始めた、カラフルなお菓子の山。
封印した一年前の『第1回目』をどうしても思い出させる、季節のイベント到来に、
二人の間にもあからさまな『焦り』が、見え隠れし始めていた。

(のんびり、お外でメシ食ってるうちに…)
(一年近く、経ってしまっていたなんて…)

一年かけて、のんびり茶飲み友達感を熟成。
五十年後も今と変わらず、公園で四季の移ろいを感じ、共に歳時記を愛でているだろう。
こういう穏やかな老後を、二人で過ごせたらいいなぁ~という、共通認識を持っている。
これって実は、物凄い幸運なことだと、薄々気が付いてはいるけれど、それと同時に…

(いやいや、気付くのが早過ぎるだろ!)
(二十年先でも、まだ早いぐらいです!)

長い人生を見通せば、二人の仲は異常に早く深まったと言えなくもないけれど、
直近一年で見れば、尋常ではないぐらい、の~~~んびりしすぎている?気がする。
この一年、こっ、交際一年ちょいとしては、まっ、まるで…進展してない?ような。

多忙ゆえに。公園ご飯が居心地良すぎて。そもそも、極秘交際(公言してないだけ)だし。
このまま緩やかに、三十年六十年。過ごしたっていいかもしれないな~、等々。
相性の良さに浸りながら、お互いのビビリ&ヘタレ&ピュアを隠し、言い訳を重ねて。
ここここっ、こいっ、恋人、同士としての努力やらなんやかんやを、怠ってしまった。

(見た目に寄らず、奥手だった…っ)
(こんなとこまで、似た者同士…っ)


このままじゃ、すぐ…ドクロだぞ~
想いがゾンビ化…浮かばれないぞ~

オレンジや紫の、カラフルなパッケージに描かれた、おばけ御一行様方。
陽気なカボチャ達にも、何だか笑われてるような気さえ、してきはじめた。
更に忌々しいことに、先日の合宿では、特に用もなく片付けも手伝わないくせに、
妖気なカボチャプリン頭が立ち塞がり、何故かリンゴ味の飴玉を寄越してきたのだ。

「…何、コレ。」
「おすそわけ。」

「…何で、俺に?」
「アップルパイの代わりに、アップルπ…らしいよ。ちょっと早いけど。」

「っ…ご馳走様。」
「…こちらこそ。」

どこかで聞いたような気がするオヤジギャグと、意味不明な返事を聞こえないフリし、
口に入れたまんまるリンゴを、ソッコーで音を立てて盛大に噛み砕き、
唾やら何やらを飲み込む勢いを借りて、久しぶりに俺から電話を掛けていた。


「えーっと、こここっ、今年も、その…っ」「おっ、お願いできれば…凄ぇ、助かるっ」

一年前の、10月16日。
アチラが捻り出してきたおデートの口実を、今年はコチラが使うことになるなんて。
一生の不覚どころか、もう、口惜しいやら悔しいやら、忸怩たる思いで断腸しそうだが、
今はそんなことを言っている場合ではない…利用できるものは、何でも使わないと。

(猫の手…借りてやるよ!)

あーはいはい、去年と同じお店でいいんですね~今年のご予算は1,800円でしたっけ~
今年は部員さん達と連名であげられなくて、色々と大変ですね~ご愁傷様です~

えっ!?プレゼント買った後、一緒にご飯?あ、それは喜んでお受けいたしますよ!
近場に美味しいおにぎり屋さん?それは聞き捨てなりませんね。ぜひ行きましょう!
公園がない?それなら、俺は別にどこでもいいですけど…はい、万事お任せします。

「それでは、また当日…楽しみにしております。おやすみなさいませ。」
「あぁ。俺も楽しみにしてるよ…掃除、頑張っとく。おやすみ、赤葦。」

(…ん?掃除?頑張る???)

ヤケクソで電話していたせいか、要所要所、いくつか聞き逃していたらしい。
それが、絶対に逃してはならない部分だったと気付いたのは、お店を出てしばらく後…
やけに多めにおにぎりを買い、静かな住宅街を歩いている時だった。


「あの外灯を、左に曲がったら…到着だ。」
「到着?えーっと、どこへ…でしょうか?」

「どこって、そりゃ…ウチ、だろ。」
「…はぃ?ウチ…おっ、ウチっ!?」




*****




「おおおっ、おじゃま、しますっ!」
「テキトーに、座っといてくれよ。」

ごくごく一般的な、木造二階建。
玄関からまっすぐ奥へと続く廊下。その脇から、二階へと上がる回り階段。
築年数は古いが、物はさほど多くなく、家主の合理的な性格を表している、整然さ。

通された二階の一番手前の部屋は、六畳の和室。おそらくは元・子供部屋。
部屋いっぱいにカーペットを敷き、ベッドの代わりに、大きなマットレスと布団。
あとは、壁の一面が全て本棚。空いたスペースに、小さな座卓と座椅子。
子どもだった子が(予想よりはるかに)大きくなり、成長とともに学習机とベッドを撤去。
今は『寝床付書斎』となった、現・大学一年生の部屋…つまり。

(黒尾さんの、お部屋っ!!!)

部活で忙しかった(現在進行形)せいもあり、友人宅に遊びに行った経験など、皆無。
家主は部屋の窓を開けて換気すると、客人を置いて階下へ降りてってしまったが…

(『テキトー』って、難易度高いっ!)

漢字で書けば、適当。『適宜、当たり障りのないように』だとマシだけれども、
もし『適確に当てろ』だとしたら、もう完全にお手上げ状態。
失礼のなきよう、俺と黒尾さんの関係に相応しい席次?を、しっかり考えて…

(俺と黒尾さんの、カンケー…っっっ)

目をギュッ!と閉じ、ビシっ!と音を立て90度踵を返し、お布団に背を向ける。
そろりそろり、背後に鞄を下ろして『壁』を築いてから、おそるおそる目を開ける。
そこには、俺に冷静さを呼び戻す、最愛の本の山たちが…


「…あっ!」

見慣れた文庫シリーズの背表紙とタイトルの並びが、いきなり目に飛び込んでくる。
俺の部屋にも、全く同じものがある…大好きな作家達の、大好きなミステリ!何冊も!!
これも、あれも、それも!あっちのも!全部読んだし、持ってるやつ!

(ど~おりで、気が合うと思った!!!)

蔵書イコール脳内。読書遍歴すなわち思考回路。似た者同士ここに在り。万歳三唱!
こんなの、もう、惹かれ合って当然。今すぐこれらの本について、深く語り合いたい。
ここにあるだけで二十年は話が尽きないし、今から語り始めたら、気付けば明日の昼…

(ってことは、今日は泊まり確定。)

…いやいやいや、違う違う違う!
おっ俺は、そんなつもりで…っ!

慌ててぶんぶん、虚空に向かって手と頭を振り、趣味ゾーンから目を逸らせる。
おそらく元は学習机があっただろう、窓際に近い方には、学業に関する書籍がズラリ。
だが、古典、数学、化学、世界史等、自分の本棚にある『定番』は、そこになかった。
民法、刑法、海商法。統計学に論理学。たった一年分とは思えない、厚さと重みの…差。

(大学生…法学部、だったのか。)

俺の知らない、黒尾さんの世界。
今年の初め、春高が終わってバレー部を引退し、高校も卒業。
本来なら、学校も学年も違うから、引退後もご縁が続くことの方が、レアケース。
黒尾さんとは『特別なご縁』で結ばれているから、こうして今もお逢いできているが、
それが『特別』過ぎるせいか、お逢いできるだけで満足していた、というか。

(黒尾さんのこと、ほとんど…知らない。)

趣味の読書どころか、通ってる大学や、学部も知らないだなんて。
この一年(+2ヶ月)、俺達は一体何をして、何を話していたんだろうか。
これはもう、のんびりというよりは、相手に無関心だと謗られても仕方ない状態だ。

(このままじゃ、ダメだ。)


勿論、根掘り葉掘り聞くつもりはないし、お互いに守るべき・引くべき領域はある。
でも、その境界線がどこかを確認し合い、お互いをよく知ることは、絶対に必要だ。

(正直、怖い。けど…っ)

俺の不用意な言葉で怒らせたり、不快な思いをさせるかもしれない。
この穏やかな関係が崩れる可能性だって、無きにしも非ず。怖くてたまらない。
それでも、恐怖に負け、カッコつけて逃げ、怠惰に時を過ごす方が、ずっと失礼だろう。

(今日を機に、変わる!)

何の因果か知らないけど、『今日』というのが腹立たしくてたまらないが、
そういうのも全部ひっくるめて、ちゃんと丸ごと、真正面から、黒尾さんと向き合おう。


しっかりと目を開き、本棚と相対する。
一番下の隅に、バレーボール競技規則。
少し緩んだ胸に、窓の外から…金木犀?
優しい秋の香りに、目を細めて深呼吸。


「お待た…っ、何だか御機嫌みてぇだな?」
「はい。こちらこそ…お待たせしました。」




*****




お湯を沸かしてお茶を入れ、買ってきたおにぎりを全て半分に切り、大皿に並べる。
脇に冷蔵庫から取り出した田舎沢庵と、箸休めの蒲鉾を添え、即席みそ汁にお湯を注ぐ。
みそ汁におかかの粉を追加で乗せ、深呼吸。あぁ~、いい香りだ。

(よし、少し…落ち着いてきた。)

ちょうど一年前。
ようやく一目惚れの初恋を実らせ、(極秘)交際にこぎつけたというのに、
なかなか一歩踏み出せないまま、約2ヶ月。我ながら酷い口実で、騙し討ち初デート。
その後も、春高終了まで、引退&卒業するまで、進学が落ち着くまで。
インハイに、夏の合宿三昧。次から次へと言い訳を重ね、あっという間に一年。
週イチぐらいのペースで、公園でのんびり飯食ってダベるだけのおデートを続けている。

(おい。ジジィの、茶飲み友達かよ!)

公園メシは、それはそれで心地良い。
普段の姿からはまるで想像もつかない、ほわほわ~っとした、穏やかな赤葦の表情。
それをぽわぽわ~っと眺めているだけで、もう幸せで幸せで。腹も心も満たされちまう。

毎日、コイツが美味そうに飯食ってる姿を、真横でのんびり眺めていられれば。
ジジィになっても、陽だまりのような二人の空間に、ひねもすのたり浸っていられれば。
朧げながら脳内に浮かぶ、五十年後のまったり縁側の光景に、我ながら大満足…

(…って、さすがに早ぇだろ!!)

老後の茶飲み風景は、確定。
でもその前に、二人でもっといろんなことを愉しんでみたいじゃないか。
成人したら、まず月見酒。小料理屋で季節の肴と地酒。たまには洋食とワインもいいし、
ドイツビールの祭典に出向いて、海を見ながら乾杯するも良し!その後は、二人で…

(こ…っ、恋人らしい、アレコレとか。)


…で、結局。
夏合宿のバタバタ、交際一周年あたりからずっと策を練り続けて、さらに2ヶ月経過。
赤葦にしては珍しい、動揺(と不機嫌)を隠し切れない「今年はどうされるんです?」に、
思わず吹き出しそうになるのを、すんでのところで堪え、これ幸いと乗っかった挙句、
到着直前まで、『ウチ』というおデート場所を確定する言葉を、口に出さないまま…

(親の留守に、連れ込みました、と。)

我ながら、サイテーだ。
ヘタレの上に、卑怯。酷さよりも情けなさが勝る自らに、申し訳なさが募り、
赤葦を部屋に通してから、半ば逃げるように台所へ飛び込み、ゆ~っくり食事の準備。
その間、飯食った後の『はじめてのおウチおデート』を、入念に再シミュレーション。
正直に言えば、二年以上ずっと妄想し続けているが、いざ『今日これから』となると…っ

(脳内、じっ、自主規制…しちまうっ!!)


あぁ…
なんか、また落ち着かなくなってきた。
チープなインスタントみそ汁のにおいも、とっくに消えてしまったような。
もっと脳内がクリアになるような、はっきりしたにおいの…お、田舎沢庵、食っとくか!

…いやいやいや、ダメだろ、絶対!
はじめての…が、田舎沢庵味とか!
リンゴ飴の残り、どこへやった!?

なんやかんやを振り払うように、慌ててシンクでゴシゴシゴシと手を洗う。
念のため、淹れたての緑茶で、ブクブクブクと、うがいもしとこう…

「っっっ!!!あっちぃーーーっ!!」

熱いに決まってんじゃん、なぁ?
もうホント、涙、出てきそうだ…

「俺、すっげぇ、カッコ悪っ…。。。」

熱さと共に吐き出した言葉に、ストンと肩の力が抜けた。
あ~、そうだよな。俺はどーしょーもなく、一年以上もカッコ悪い奴なんだから、
無理してカッコつけようなんて、無理かつ無駄…そんなこと、思わなくてもいい。
これ以上カッコ悪くなりようもないし、失敗してカッコつかなくても、それが俺だ。

「抗わず、流れに…任せよう。」


しっかりとお盆を持ち、二階へ上がる。
部屋のドアを開けると、ふわり。優しい香りと、その香りによく似た、淡い微笑み。
見慣れたはずの自室が、全く別世界に見え…頭も心も、透き通るように凪いでいた。




*****




「良い香り…お庭に金木犀、ありますか?」

半分ほど開いた窓から、秋の涼風。
レースのカーテンを柔らかく揺らしながら、部屋の中に優しい香りを運んでいた。

窓辺に立っていた赤葦は、夕焼の赤と宵闇の黒が交じった光に目を細めながら、深呼吸。
その香りに誘われるように、黒尾は座卓にお盆を置き、赤葦の傍に並んで立った。

「いや、ウチにあるのは…銀木犀の方だ。」

金木犀は、オレンジ色の花。銀の方は、白。
花の咲く時期はほぼ同じか、金の方がやや早め。葉っぱの形状も、少し違う。
香りも金銀共によく似ているが、その強さが全然違う。強い香りで町中を包むのが、金。

「近づいたら、そっと香るのが…銀だよ。」


この中にも、ウチの銀の香りが、少しは混じってるだろうけど…な。
黒尾はそう言うと、静かに目を閉じて、胸いっぱいに数度、深呼吸。
強い金に隠れて、全然わかんねぇよな〜と、微かに頬を苦笑いを零した。

一見すると、苦笑い。
でも、いつもの『黒尾らしい』笑みとは全く違う、ごく自然で力みのない笑みの形に、
赤葦は一瞬だけ目を瞠ると、少し遠くを見遣りながら、仄かな苦笑いを返した。

「まるで、俺…みたいな存在、ですよね。」

澄んだ秋空に輝く眩い色、周りを惹き付けてやまない強烈な芳香。
そんな目映い『金』達の影に隠れる、地味で目立たない、ごく普通の『銀』だ。
本当に俺っぽいですね、と呟く赤葦の横顔には、晩秋のような愁いが見え隠れしていた。


数多の『金』の中に、ごく僅かでも
微かな『銀』を、感じられたなら…

銀の香りを、深く求めるように。
赤葦はそっと瞳を閉じ、鼻を少しだけ天へ向けて、ゆっくり呼吸。

その銀に、誘われたかのように。
黒尾は赤葦の頬に手を添え、香りを確かめるべく、顔を近付けた。

「慎ましく香る、銀。俺が好きな…花だ。」
「そうあって欲しいなと…願っています。」

互いにしか聞こえない、囁き。
唇を掠め合った吐息の熱さに、
思わず息を飲んだ…その瞬間。


「…くしゅんっ」


秋風の冷たさと、互いの熱の温度差が、鼻を擽ってしまったのだろうか。
だが、それにしては、聞こえてきた音が、あまりにも…遠いような?

鼻を触れ合わせたまま、キョトンと固まる二人。同時に首を傾げ…
黒尾は顔を青く、そして一転赤く染めると、レースのカーテンを思い切り開いた。

「ーーーっ!!!」
「???っっっ!」

窓の向こう、同じ位置、同じ高さに…窓。
そのお隣さんの窓に、ひらがな5文字が、金色をピカピカ放っていた。

『お・め・で・と・う』

おそらく、文字をかたどった…風船?
ぷるぷる震えながら一文字ずつ掲げる、赤ジャージ達の上には、反転した『1016』。
どうやら、1016を祝うパーティの最中、そのお祝いの言葉だけを、こちら側に向けて…

(んなっ!?まさか、自宅で…誕生会!?)
(ごちそうさま、って…そういうこと?!)

どうしても窓を開けたくなる、この季節。お隣さんだって、それは同じ。
顔は見えなくても、小刻みに揺れる金文字から、猫達のニヨニヨが伝わってくる。


「あークソっ!ありがとよっ!!」
「そちら様も、おめでとうっ!!」

夕焼以上に赤く染まった二人は、金に向かって叫び、窓とカーテンをピシャリと閉めた。
そして、互いにしがみ付くように強く抱き寄せ合うと、再度瞳を閉じた。

「これ以上に、恥かしいことは…ないな!」
「えぇ。全てサッパリ…吹き飛びました!」


パン、パン、パパパンっ!!
隣家から寿ぐ音に、乗せられながら。
二人は笑顔と共に、唇を重ね合った。




- 終 -




***********

2024/10/18