「あの、僕が言うのもアレなんですけど…」 「ホントにいいんですか、木兎さん?」 「毎度毎度、お片付けをサボっちゃって。」 「いいの!俺…焼鳥になりたくねぇもん!」 第三体育館での自主練が終わった瞬間、今日は俺が弟子にジュース奢ってやる!と、 木兎は可愛い弟子こと、月島・日向・リエーフを引っ張り、残務を黒尾と赤葦に押し付け逃走。 弟子にとって、師匠の命令は絶対。 体育館から突き刺さる強い視線に心身を震わせながら、木兎に付き従って合宿所まで退避。 フルーツオレを御馳走になりつつも、さすがにマズいかと師匠にサボりを問い質した…が、 師匠から返ってきたのは、相変わらず意味不明な言葉だった。 「焼鳥、ですか?」 「ねこま、じゃなくて、ねぎま的な?」 「あ、俺、タレより塩より、黄身派です!」 俺はまずもって、ももをタレと塩で5本ずつ食ってから、次に何食うか考える派だ…と、 木兎は真顔でキリリと答えてから、弟子達と円陣を組み、そのままの表情で話し始めた。 「炭と火…黒と赤の視線で、焦げちまう。」 お前らも知っての通り、残業大好き組の黒尾と赤葦は、とにかく視線が容赦ねぇ。凶器だ。 大体いつもは、冷たぁぁぁい視線で、お腹の下がキュンと凍えるカンジなんだけど、 自主練後のお片付けが始まる前だけは、その温度が急上昇して、焼け焦げそうなんだよ! 「『焦』は、鳥が火であぶられる字らしい。」 さっさと帰れ。 ここから去れ。 炭火のアツアツな視線に挟まれて、ジリジリ。 か弱い子梟の俺は、いつも焦がされそうで、焦ってあの場を明け渡してやってんの。 炭火が赤く燃えるのを、『熾る(いこる)』って言うらしいけど、 俺はアイツらが『憩る(いこる)』ため、わざと片付けを譲ってやってるだけ…サボりじゃねぇよ。 つーか、俺を間に挟んで熱視線送り合って…1年半もお互いに焦がれ続けてんのに、 ジワジワと炙るだけで、バーーー!と燃え滾らねぇとか、まるっきり炭火だろっ!? もう、焦れったくて、焦れったくて…周りの方がバーーーン!と暴発しそうなんだよ!!! 「無自覚の炭火より、こっちが焦がれるっ!」 一年坊主のリエーフと、カラスの面々は、まだよくわかってねぇだろうけど、 焦れに焦れた猫&梟が、炭火の火力を上げるために、火炎放射作戦の真っ只中なんだ。だから… 「二人の…炭火爆発作戦の、邪魔するな。」 ちなみに、焼鳥屋に行ったら… 黒尾は初っ端にししゃも、赤葦はいきなり焼きおにぎりを注文するんだぜ? 「その時点でもう…焦れったいだろ?」 全く予想外の話だった日向と月島は、驚きの目。ある程度予感していたリエーフは、遠~い目。 心が焦れすぎて憔悴しきったのか、炭火の煙が目に沁みたのか。 ちょっとだけ涙目の師匠を肩を、弟子達は優しく撫でた。 - 終 - ************************************************** No.001 焦がれる 2023/07/20 ETC小咄

